おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
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ゆっくりしていってね!!!

2014年12月24日水曜日

【大阪大学混声合唱団第56回定期演奏会】

2014年12月23日(火・祝) 於 高槻現代劇場・大ホール

チケット代1,200円也
(内・チケット代本体500円、ビラ込みのために勝手に持ってきたスーツケースをいれるためのロッカー代700円)

最近にしては更新が遅れ、申し訳ありません。さて、昨日は2年連続で阪混でした。ちょっと、選曲で、気になる点がありましたので。しかし、相変わらず今年もビラ込みからのスタートである。
しかしまぁ、去年の演奏と比べてどんな音が鳴るだろうか、という比較にも興味がありました。……嫌がらせじゃないよ?w ホールも違いましたし、去年は、ある意味、初演と大々的な合同に色々持ってかれたって思いは素直にありますし……とはいえ、今年も団員数134名という大所帯みたいですけどね笑すごいわこれ笑団員だけで圧巻の5列オーダー。
しかし、大阪では間違いなく偏差値第1位団の一角だろうと思われるこの団(他、阪大男声、フロイント、テンペスト)、何かこう、色々とスペック高く見えるんですよねぇ……いろんな人見てると(完全に個人の印象ですw)。しかも噂話に、阪混の中にミス阪大がいるという電波話題をキャッチ。一応照会しましたが、事実は確認できておりません……笑

・ホールについて
久々?のはじめてホールですね。この前、あましんアルカイックホールを「ザ・市民ホール」と形容しましたが、なんてことはない、こちらは、それを凌ぐほどの「ザ・市民ホール」。ベルは安定の「B--------------------------」笑 タイル貼りのステージ周辺と、何やら丸い意匠。なんだろう、この、丸いの。そこから出てくるエアコンの送風音が、いつまで経っても、切りたての水銀灯のような音を立てて邪魔してきました← しまいには、非常灯が電球切れ近いのかチカチカしだす始末。どうにかしてくれ!w
そしてこのホール特徴的なのは、絶壁ホールと「真逆」な点。1階席の座席が、いつまでたっても低いんです。最初から最後まで、ほとんど角度がついていない。多分5度とついていない。否、1度といっていいかもしれない(あくまで目算)。そりゃその分、天井は間違いなく高いのですが、それにしてもまぁ、段差が「ある」ホールは数あれど、こんなに段差が無いホールははじm……そういえば、しらかわホールは段差がないホールですね←
そして、多目的ホールにしても、これはすごい。実に響かない。所謂「デッド」と表現されるホールの響き、まさに、ここにあり。高槻をして、「ザ・市民ホール」の名に相応しい……ちなみにいうと、決して馬鹿にしているわけではなく、音圧を十分高めた上でなら、1960−70年代の邦人作曲作品は基本的に「デッド」な方が表現が豊かになるのではないかと踏んでいます。器楽でも、合唱でも。是非皆様、トライしてみてください笑
ところで、この「ザ・市民ホール」、花道がありません。歌舞伎等の代替公演や歌謡曲系のコンサートに備えて、こういう多目的ホールは大体1本は花道を持っているものですが……(1本という例も、東京エレクトロンホール宮城くらいと珍しいものですが)

全体として、ステージの入退場が恐るべきスムーズさでした。100人以上が動いているとは思えないほどの軽快さ。見てて美しかったです。

・オープニング
吉本昌裕「大阪大学学生歌」(立山澄夫)
黛敏郎「萬葉歌碑のうた」(志貴皇子)

さてオープニング。散々語った学生歌への思いと「萬葉歌碑のうた」の成立史については、去年の記事を御覧ください←露骨な誘導
やはり、団旗ピンスポ、指揮者ピンスポ、そして曲の始まりでステージ明転。明転のスピードが早かったか。「朝影さして」あたりでピークが来るとちょうどいい気がする(妙なコダワリ)。
演奏は、全体として滑ってしまったか。惰性で歌ってしまった、といったほうが近いかもしれない。確かに散々歌ってきた曲とはいえ、いずれも歌詩に美しい曲。その良さを活かせるだけの言葉をしっかりと出すべきだった。具体的には、文節の切れ目でちゃんとフレーズを設計する、それだけのことで、この曲の表現は、もっともっと豊かになったような気がします。「萬葉」なら、途中のsub. pをもっとしっかりと示すだけでだいぶ印象が変わったはず。他、細かいことで、「学生歌」おそらくベースの、第三音の合流の仕方をもっと丁寧に(他三声に原因ありやも)、「萬葉」、テナーのノド鳴りが気になった点。
普段から歌っている歌にこそ落とし穴。気をつけたいことです。もっとじっくり聞きたかったなぁ。テンポもちょっと早かった?

第1ステージ
瑞慶覧尚子・混声合唱組曲『あなたとわたし』(みなづきみのり)
指揮:鈴木敬史
ピアノ:山本亮

これが聞きたくてやってきたようなもん。所属団初演曲です。なんという私的事情(そりゃそうか笑)、初演団体として、再演詣では出来る限りしたいものです(意見には個人差があります)。3曲目がヒッジョーに好きです。とても好きです。刹那と孤独の中に潜む感情の発露、あるいは咆哮。もちろん他の曲も大好きですよ、ええ笑 パンフレットの曲紹介が見事でした。ものすごくこの曲を読み込んでいる。キーテキストに据えられたのは、「あなたとわたしは ふたりでひとつ はなれてうまれて ぶじにであえた」。ここでこれだけ読み込める、もしやお主は文豪か←
さて、「終わりよければすべてよし」!? 4曲目はとても良かったです。他、1曲目の「グッピー」の言い方、あるいは鈴木くんの指揮など、とても好印象な点がおおい演奏です(実際、この指揮好きやで!)。逆に、特にベースが語尾を投げ捨てがちだったのと、1回しか出てこない、パートソロで奏でる「生と死の反復」が埋没してしまったこと、あるいは、全体的に母音や有声子音が出だしに来る単語の飛び方がイマイチだったことが課題として挙げられます。とはいえ、各パートの音もしっかり揃っていて和声もしっかりしている。対位の部分も各パートちゃんと歌えていて、聞いていてとても気持ちのいい演奏。でもどこか、窮屈というか、表現の自由度がとても低く思えました。なんというか、周りに沿って歌うことは十分なものの、じゃあ、各個人の歌がちゃんと歌として機能できているか、勘ぐってしまうものがありました。みんなが自由に声を出して、それが支えあっているというのが、特にこういった曲の理想であるような気がします。お互いがしっかり歌い切ることをベースとしないと、ただ旋律をなぞるだけになってしまう。したがって、楽譜という決められた範囲内で、もっと動いていい!それゆえか、良かった4曲目も、クラップはおとなしすぎたか。
……もっとも、初演も中々表現が浅いものでしたけれども←

インタミなしでこのまま暗転、舞台転換。3ステ構成の場合、最近、特に愛知県だとここに10分休憩を入れて、次に15分休憩を入れることが多いものの、ある人曰く、嘗てはこちらのほうが普通だったとのこと。なるほど、ここの10分休憩は、次の演出ステージに備えた着替えの時間という意味合いも強かった点、そういった大事がない限りは、ここの休憩はない方がテンポがいいかも。4ステ構成なら、ここでインタミないのも慣れっこですからね。

第2ステージ
千原英喜・混声合唱のための『おらしょ』カクレキリシタン3つの歌
指揮;馬場麟太郎

またしても演奏したことのある曲。ここまでそういう曲が続くことは、いろんな演奏会へ伺いましたが、さすがにそう滅多あることではありません。最近、何かとクラシック界隈を騒がせた「おらしょ」再評価の流れ。合唱界隈だと、おらしょと言えば、なみいる作曲家たちの作品を抑え、圧倒的人気を誇る千原おらしょ。徹底的に世俗的な流れの中に、ひっそりと、まさに「カクレ」ている、グレゴリオ聖歌による祈り。認められなかった聖を、なんとか俗の中に根付かせ、溶けこませ、そして隠そうとする、その努力が、表面上の音楽と内面の静かな祈り。最後、終止しないのもまた、この曲が生活の只中に根拠を求める一つの所以……とまで言うと、言いすぎかしら。並びは女前男後でしたが、男声の旋律が結構あることを考えると、素直にSATBでよかったような気もしました。好き好きですけど。
さて、この曲、上にも書きました通り、聖俗入り乱れて祈りを段々と描写していく作品です。いわば、俗に隠すようにして、禁令の聖を守るという側面を持っていると解釈しています。その意味では、この世俗的な旋律は、全く迷いのない、ピュアな世俗旋律でなければいけません。雨森文也先生などは、愛知県のワークショップで「ぐるりよざどみぬ」の部分を酒の席のひと唄のように表現せしめたこともあります。それがオーバーにしても、それくらいに、全く見えないところに祈りを隠した上で、逆に直接的にグレゴリオ聖歌を歌うところでは、全てから開放されたように信仰心をぶつける必要がある。宗教曲というよりは、この曲は、一つの戯曲的側面を持っていると言っても過言ではありません。
すると、結局、第1ステージの課題が課題として残り続けます。めいめい世俗を歌う中に、信仰という一つの目的に収斂していく、その意味では、合わせるというよりは、旋律が収束していくといった方が正しいのかもしれません。ここにおける歌詩の意味は、擬態している以上、この歌詩の意味で「なければならない」のですから、まさにそのように歌うべきです。逆にそれでこそ、静謐たる聖の部分が際立つ。やはり、綺麗なアンサンブルでした。千原和音は十分に鳴っていた。しかし、やはり、この部分を抉りにいくことが、ひとつ、とても重要なことのような気がしてなりません。
しかし、自分のメモ、「世俗性に擬態しながら神を歌う曲」って、このメモ書いた脳みそどこ行った……w
あ、そうそう、3曲目の男声ソロの入り、これ以上ないほどに最高でした。

インタミ20分。さすがに長いと思ったのか、幕間。有志(と、ねこバス)合唱でした。
久石譲(arr.若林千春)「となりのトトロ」(中川李枝子)
東混の愛唱曲でも有名……だよね?笑 さすがに人数が必ずしも多くなかったため、リズムパートがホールに負けてしまっていたようには感じましたが、そこは逆に、有志だけあって、テナーをはじめ、各パートしっかり歌えていたのが印象的でした。ただ、この曲、合間合間に合いの手を入れるのが前提となって編曲されている側面があるので(所々不自然に音が薄い部分がある)、そこでもっと遊ばないと、表現が単純になってしまう側面も。しかし、まぁ、楽しく聴くことができたのでヨシッ!
で、祝電披露、どこぞが「混声団」と呼ばれていたが……そんな団あったっけ……?笑

第3ステージ
Sir John Tavener の作品から
「FUNERAL IKOS」(作詩者不詳)
「THE LAMB」(William Blake)
「THE TYGER」(William Blake)
「TODAY THE VIRGIN」(Mother Thekla)
指揮:根津昌彦(客演)

去年逝去されたジョン・タヴナーの追悼も含めて。時代の中で、ロシア正教に改宗し信仰、脳卒中を発症して以来、途中心臓手術を挟みながら、30年以上にわたる長い闘病生活を送ってきた受難の天才。イギリス作曲界の巨匠の一として作曲界をリードしてこられたとのこと。今回は、2曲目と4曲目はクリスマスキャロル。アナウンスは英語読みでした。アナウンス技術にかかわりますが、ここはカタカナ読みでもいいような。まぁただ僕も、自分でアナウンスするとき、英語読みでやってくれ!とリクエストされたこと、ありましたけど笑
客演の根津先生は、阪大男声の出身。阪大OBです。まちづくりを本業としつつ(へー!笑)、合唱では天上花火の主宰、近グリ常任指揮者などを務められています。ところで、根津先生のこの本業の会社、どこかでお名前を拝見したような気がするんですよね……気のせいかしら笑
オーダーはBSAT。最近、これまで試みられなかったオーダーを試みる団がとても増えた印象。面白いことだとは思います。そしてやはり4年生にはコサージュ。その案内のアナウンスがあった瞬間のちょっとした哀愁のひととき。
知らなかった曲なので曲から。非常に好き。現代曲の諸技法の中に、キャッチーなフレーズがかぶさってくるスタイル。酸いも甘いもみーんな楽しめる。特に1曲目と3曲目が好き。否みーんな好き笑 うちのアラカルトに入れといたら結構映える気がする←
アレルヤの一言だけとっても、おらしょの時とは段違いで旨かったのでびっくらこいたのですが、この表現を前半にも持ってきたかったというのが素直な思い! 特に、3曲目の頭の豊かな音量は、前のステージでも積極的に使っていくべきでした。ちょっと英語がカタカナだったなぁとか、a母音の広い方が浅すぎるとか、あるいは4曲目、裏拍が多用されていましたが、その裏拍と言葉の対応がイマイチ付ききってなかったかなぁとか、あるいは3曲目中間部の女声の対位にズレが生じていたような気がしたとかいう点も見られましたが、それにしても、曲も好きでしたが、表現も好きでした。ブラボー!一歩手前!笑←

・アンコール
根津先生:ラター「天使のキャロル」日本語版
天上花火の団員の方が邦訳活動をされているとか。ラターは今度のPFKで新曲初演もあるそうです。
それにしても、名邦訳!非常に曲にあっていて、好きでした。合唱は上手でしたが、欲を言えば、いっそ、この曲のほうを日本語の方に引きつけて、日本語に合わせてフレージングしても面白かったかもしれません。うまく「手懐けたら(なんつー表現だ!w)」クリスマスの定番ソングにできそうなくらいに印象良かったです。いやもう、「きよしこの夜」に並びますよ、この曲。

馬場くん:信長貴富「青空」(『雲は雲のままに流れ』)
最後のステージの印象のまま、よく音が鳴っていました。アンコールがよく聞こえるというのは、アンコールの宿命なのだろうか笑 すごく素敵に響いていました。

そして、卒団生を前へ。アンプラグドで団長挨拶。あとちょっとまで思いが出かかって、なんとか堪えた。

・エンディング
武満徹「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」
この選曲のセンス!すごく良い!もう、タイトル含め、この歌詩に全部思いが詰まってるんじゃないかなって。こみ上げてくる思いとともに、本当によく歌い切りました。正直ねぇ、グッと来ましたし、これが一番良かったんじゃないかしら笑

さすがに、ロビーコールは出来なかった模様……「ザ・市民ホール」、ホワイエ狭いし、階段まであるしね笑

・まとめ
ここを書くのにずーっと悩んでました(あと、個人的なことで誰某と大喧嘩してちょっと書く気になれなかった……←)
とても評価に値する演奏会だったと思います。特に最終ステージのタヴナー。精緻なアンサンブルと表現の巧みさに、聞き入ることが出来ました。
しかし他方で、1,2ステージでは表現の不足感がどうしても目立った。以前どっかしかで書いた、大人数合唱のジレンマ、というのにハマってしまっている印象も拭いきれません。もちろん、人数いればそれだけアンサンブルも成立しやすくなります。他方で、音質や表現の質を揃えるのに難儀してしまう傾向にあり、ともすると、「縮小均衡」的に、小さい方小さい方にまとめてしまいがちです。それでも、聴くことはできるから。
中規模〜大規模の、現状多くの合唱団に言える。今ひとつ、アンコンの優秀団体のように、「拡大均衡」を目指されては如何でしょうか。しっかりと音を出す、そして、しっかりと表現をする。それを、クサいぐらいに追い求めて、一つの大スペクタクルを十二分に表現出来るだけの力を身につける。そうでないと、『おらしょ』のような曲を表現する時に、どうしても限界が来てしまう。
その成果の先のいいお手本が、タヴナーだったり、「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」だったりするのだと思います。今後共たゆまぬ努力を。しかし、3ステながら中身の濃い、いい演奏会でした!

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