おおよそだいたい、合唱のこと。

ようこそお越し頂きました。
主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
やたら細かいレビューからノリツッコミまで、現状、合唱好きな方の暇つぶしには最適です。
ゆっくりしていってね!!!

2015年1月27日火曜日

【第22回日本男声合唱協会演奏会じゃむか関西2015】

2015年1月25日(日) 於 伊丹市立文化会館いたみホール
主幹:OSAKA MEN’S CHORUS

それでも僕はマーガリン。
元ネタ

さて、合唱演奏会シーズンですが、学生団ではなく、今日はお呼ばれした演奏会に行ってまいりました。演奏会だけでもなかったんですけどね……笑 呼んでいただいた方にはいつもお世話になっております。
男声合唱って、学生文化的側面と切っても切れない側面が強いのですが、他方で、そのOBを中心として、一般合唱団でも多くの男声合唱団がコンクール、あるいは合唱文化全体を引っ張ってきました。関西や名古屋にある学生合唱団の連盟や、特定の指揮者のもとに集まる晋友会合唱団のような組織を除けば、特に一般合唱団で、団体が互いにより合って情報交換・技術交流を図るイベントはとても少ないように思います。そんな中、1971年設立のこの「日本男声合唱協会」通称・JAMCAは団体・個人で100会員を数える非常に大規模な組織を形成して今も活動を続けています。設立の主体になったのが東京リーダーターフェル1925や東海メールクワィアーが中心となっていることもあり、段々と高齢化の波も避けられないでいる団体ではありますが、いまや上の2団をはじめ、全国から実績と実力を兼ね備えた団が揃う、まさに、名前負けしない活動を続けています。第1回演奏会は1973年。最初は決して多くない団体数での活動だったところ、その後、時代の流れから活動の幅を増やしていき、今のような規模になったとのことです。
毎回毎回、その会の趣旨に違うことなく、情報交換どころか情報を作り出す(!?)ような活動を行っている、このJAMCA。今回も、情報を作りに行くようなプログラムです。

・ホールについて
もうこのホールばっかでさぁ……笑 実は来週も伊丹詣での予定ですよ……笑
とはいえ、伊丹で1日仕事でなかったのは今回がはじめてかも。ゆっくり起きて、キャンドゥで持って来忘れたハンカチを買い、ブランチを商店街のお蕎麦屋でいただき、ヒロコーヒーでコーヒーブレイクまでしっかりしてから行きました。実をいうと結構狭い街ですが、それが逆に、兵庫の下町らしさを凝縮しているようで、いい街だなぁと思います。
実を言うと、ちょうど20年前の被害が非常にデカかった場所でもあります。阪急伊丹駅は、阪急の路線網の中で数少ない、壊滅的ダメージを受けた駅で、駅舎が全壊、その影響で、折り返し運転で急場をしのぎ、再建する際には線形を弄って、駅の場所を変えて再開に至った程です。その影響で、実は駅のある場所と中心街がややズレた位置にあります。西北以東(ゲシュタルト崩壊)で、阪神大震災の爪痕を感じることの出来る、新たなる歴史をも物語る土地でもあります。
そんな中、今も静かに、大阪のベッドタウン・自動車幹線の役割を静かに担う清酒の都。静かな場所に響かせるという意味では、関西の合唱のメッカとなるには、ちょうどいい場所かもしれません。――否、やたら男声合唱に好まれるのは、やはり酒のお陰なのだろうか笑

・パンフレット
さすが、長年社会を支えてきた層の仕事なだけはあります。祝辞に並ぶのは、JAMCA鈴木順・会長、主幹団体OSAKA MEN’S CHORUSの“Captain”有田仁一さんだけにとどまらず、藤原保幸・伊丹市長、清原浩斗・関西合唱連盟理事長の挨拶まで掲載されています。うーん、渉外力。それに、広告面の当て方・売り方が巧み。構成上空くページ・スペースには躊躇なく全面広告・枠広告を当て、読む順番に合わせてコマーシャルのように広告を展開していくさまは、雑誌と見ても違わない。広告も、近所の居酒屋や各団広告にとどまらず、大手企業の広告も、BtoCもBtoBもひっくるめて、幅広く取り扱われています。この営業力。演奏会前から圧倒されました。コネの力とひっくるめるにしても、これだけの広告を集めるのは大変なもの。それだけのことをやってのけるだけの経験と、あと意地の力に脱帽です。内容も充実。今も読んでて飽きません。書いている今でも、かなり単純な誤植を見つけてしまったりもして……笑

会場は満席に近いお客様でいっぱい。オンステだけで総勢500人近くいらっしゃいますから、当たり前と言えば当たり前……?今回は、2階席で聞いてみました。元々奥行きがそんなにないホールなので、2階席でも結構近く見えます。しかし、それにしても、持ち回りのジョイントにしたって、ステージに乗っている人が平均2~300人の環境にいるところ、圧倒されないだけ、2階席でよかったかな……?笑
進行に出てこられた司会の方。やたらアナウンスが上手いなぁと感心していたら、元NHKアナウンサーとのこと。そら上手いわけだ。強勢の使い方が非常に上手なんですよね。くどくなくて、自然に話される。僕の中ではアレも演奏の一部のようなものでした笑 そんなアナウンスでの前説。JAMCAの経緯と、この演奏会について。なんと個人会員はアメリカにも籍を持つ人がいるとか。そして、ターフェルやMEN’S CHORUSで交流があったという、台湾からの観客ゲストも紹介されました。どうも、統一した合唱団組織を作る上で参考にしたいという研修旅行も兼ねていたとのことでした。

第1ステージ
鈴木憲夫・男声合唱組曲『永久二(トコシナニ)』
指揮:樋本英一
ピアノ;佐藤季里、小介川淳子

早速、メインディッシュクラスに重い曲の登場です笑 実を言うと、この曲を生で聴くのは初めてです。
アナウンスに絡めて。以前あるアナウンス講習会で「年齢が上がって経験が増せば、アナウンスはある程度自然にうまくなる」というものがありました。何やら身も蓋もないような言い方にも聞こえますが、この曲のテーマ、神話的・言霊的な世界観を壮大するに最も必要な経験を、JAMCAは十分に備えているように感じました。壮年(にさしかかりつつある人たち)の合唱団というのは、それだけで様々な評価を受けます。齢により音域が変わるというのもひとつ、安定しているというのもまたひとつ、よくあるのは、発声の流行の変遷で、ビブラートが目立って支持されなくなってきたことでしょうか。しかし、そういったあらゆる要素が、抽象的ながら、世界観を表現する上で必要な要素であったように感じます。確かに、ビブラートがハモりを邪魔していたり、高音がもっと出てほしいと思ったり、弱音がうまく発声的に支持しきれていないように感じたり、あるいはリハーサルが多かったとはいえ、大人数のジョイントだけに、縦が揃いきっていないようにも感じられたり、挙げれば恐らくいくらでも挙げられるだろうとは思います。しかし、私たちは流行りだけで音楽を表現しているわけではない。不朽の名作、その号を永久ニ我が物たらしめる、その堂々たる主題!不朽は、不朽であるからして、不朽です。その意味で、合唱団は、使える要素を使いきっているアンサンブルでしたし、トップテナーはよく張っていた。それぞれの要素が曲と合わさり、凄みとなって現出してきたのは、それだけで、感動そのものであったように感じます。なにより、この曲が好きだ笑 1ステだけでもお腹いっぱいでした。

アンコール:さだまさし(arr.鈴木憲夫)「秋桜」
曰く、「ステージ曲と違い、みんなが「知ってる!」と顔を上げてくれるような曲」とのこと。なるほど、確かに、この曲なら多くの方が知っていそうです。永久ニ、よりは――?笑

第2ステージ
黒人霊歌
Ev’ry Time I Feel The Spirit(arr. William Levi Dawson)
Were You There?(arr. Henry Thacker Burleigh)
Little Innocent Lamb(arr. Marshall Bartholomew)
Swing Low, Sweet Chariot(arr. Leonard de Paur)
Set Down, Servant!(arr. Robert Shaw)
指揮:広瀬康夫

いつかは聞いてみたかった、広瀬先生のスピリチュアルズ!関学の新時代を引っ張る存在で、日本におけるバーバーショップの第一線に立ち続けている存在でもあります。あと、曲の終わりの切りかたが最高にカッコイイです、いつも笑
拍手も鳴り止まぬ間に演奏開始。そして、あっという間に5曲圧巻の演奏でした。軽快に駆けていく中にも、唯駆けていくだけでなく、それぞれの言葉やメロディに、韻を踏むような細かい表現が多く用意されています。それらの表現をきっちりと表現していきながら、それでいて推進力が衰えることがないのは、各団員の楽曲理解と、相互表現、そして指揮者の牽引力の成せる業といったところではないでしょうか。純粋なエンタメって、言葉に出来ないんですよね。だって、それそのものが魅力ですもの。ただただ楽しい。十分な自律性、そして言葉で表しきれない充実のtuttiが聞かせてくれました。ちなみに、個人的に好きな曲は、3曲目。

アンコール:Ride the Chariot
「知ってる人は一緒に歌ってください」と、突然オーディエンス(数名)をステージに上げて1曲!ザ・愛唱曲といった名曲。先ほどまでのアンサンブルそのままに、軽くバチッと決めてくれました。

第3ステージ
三善晃(編曲)・男声合唱とピアノのための『唱歌の四季』(鈴木輝昭・補作)
指揮:安井直人
ピアノ:岡本佐紀子、村崎愛

各種の情報によると、この男声版編曲は、JAMCA演奏会のために原稿が散財していたものが整理され、鈴木輝昭先生の補作により、演奏会に先立って出版されました。
この曲と言ったら大人数合唱ですが(意見には個人差があります)、今回の合唱は、嘗ての阪混を余裕で凌ぐ大人数!400人いたとかなんとか。ここまでの人数で男声合唱だと、冗談抜きで、地鳴りするんですね――wしかし、この人数でしっかりアンサンブルしているというのだから、本当に凄いものだと思います。その良さがよく分かる点として、オブリガードが挙げられるでしょうか。オブリガードで味のある、雰囲気の出た、アンサンブルを壊さず良さを伸ばす音が出るためには、まるでアドリブのように洗練された、それでいて心の底から歌い切る音がないことには成り立ちません。オブリガードがいいということは、編曲の仕上がりもさながら、合唱団が歌っていることの何よりの証拠でもあります。ハモリという意味も含めたら、完成度が非常に高いステージでもありました。中でも注目なのは、「夕焼小焼」の解釈でもあります。叙情的に曲が持ち上がり、1番2番を演奏したら、次に出てくる主題は童謡のようにしっかりと歌い込み、そしてそのまま、最後にふくらませていく、というもの。なんか気付いたらボリュームが大きくなっている曲、というイメージの強かったこの曲において、ボリュームの上げ方が非常に叙情的で美しい解釈だったように思います。

アンコール:中村茂隆(編曲)「ふるさと」
しかし、これは、数の暴力というにはふさわしくない、これは、数の圧倒、まさにその言葉が似合うように感じます。

インタミ25分。長い!
オケは開演前にはステージ上に既にいました。それも、楽器を温めているだけなんですが、普通舞台裏でやっていることが多いような気がします。場所がなかったのかな……笑
演奏の前に、JAMCAの鈴木会長インタビュー。「ほとんどのジョイントが一過性の集まりなのにたいいて、私たちは半年の練習期間を重ねてきた。情報交換をしながら練習を通してお互い高め合っていく過程が大事である。今後、2年後は青森・八戸での演奏会を予定。現在100会員を数えているが、今後団体・個人ともに会員を更に伸ばしていきたい。日本中の男声人が楽しんで、全国で演奏会が開けるといい。」(抄)
曲紹介、そして、チューニング。今回のオケは、大音大のホール付きオケという立ち位置でしたが、大学だけあったか、ピッチコントロールが非常に素晴らしい団でした。某オケの復活物語が話題になったこともありましたが、その時も、最初は徹底的にピッチを合わせるところからリハーサルをはじめたとか。

第4ステージ
Wagner・“Das Liebesmahl der Apostel WWV.69”(使徒の愛餐)
12の使徒:出口武、満尾拓人、萬田一樹、木村克哉、永井雄治、奥村祐一、間瀬泰得、沢田英一、橋本恒己、福田孝祝、藤川雄紀、中西純三
天上の合唱:猪名川グリークラブ。(cond.飯沼京子)
指揮:船曳圭一郎
管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団

めったに演奏されることのない秘曲。日本での初演も1980年の阪大男声と非常に新しく、他にワグネルや東西四連といった数少ない演奏機会を持つのみです。ジリジリと男声合唱が使徒と共に歌い上げた後、天上からの合唱(2階席下手側で演奏)を聞き、それがティンパニを筆頭にオーケストラの協奏を導き出し、華々しく、初演時、かのリストをして驚嘆させるほどの圧倒的なサウンドを聞かせて曲が〆られます。この日、日本初演メンバーもオンステしてのステージとなりました。
総論的に言えば、若干締りにかける演奏だったかもしれません。特に、使徒のアンサンブルは、プロとアマチュアの混成だったということだったのもネガティブファクタだったか、若干バラけて聞こえました。そして、世界初演は1200人(!)の合唱だったとのこと、ともすると、200人程度と想定される今回のアンサンブルですら少なく感じてしまいます。特にオーケストラが入ってからは、音は整理されたものの、ボリュームが追いつけなかった。しかし、それにしても、主題のユニゾンの迫力は圧巻です。30分程で1曲歌い続ける曲。とてつもない体力を求められる曲ですが、だからこそ、アカペラの部分でもっと聞かせたかった!非常に鬼畜な要求にも見えますが、これまでがよかったからこその要求でもあります。
いなぐり。の天上の合唱は、よく訓練されていて素晴らしかった!上の響きに豊かで、縦がよく揃った、機動的なサウンドです。以前バッカスで聞いた音そのままに、感動させてくれました。しかし、これを十分聴くなら、1階席で聞いておくべきだった!笑

アンコールはなし。そのまま終演となりました。

・まとめ
とても充実した演奏会でした。プログラムも、名作発掘が4点それも新発掘もあり秘曲もありと、奇しくもまとまりのあるものになっていたように思います。なにより、単独演奏会と違って、全てがジョイントの合唱団での構成なので、言ってみればこの演奏会は、数そのものが聴衆にとっては魅力にもなっているように思います。これだけの人が男声合唱を愛してやまず、これだけの人が伊丹に集い、これだけの人が名演を繰り広げる、それだけで、この演奏会には存在価値がある。しかも、それを22回も繰り返しているというのだから、それこそ、脱帽そのものです。しかし、この演奏会に本当に求められているのは、奏者も聴衆も、これを持ち帰ること。これを持ち帰って、これからの演奏活動に生かすこと。是非参考にさせていただきたいと思いますし、この文章が、よもや参考になるならば、レビュアー冥利に尽きるものです。

・のみーこーる
この後、伊丹シティホテルで行われたレセプションにお呼ばれして行ってきました!ええ、もちろん、合唱人の演奏会は歌って終わりなんてもんじゃありません(意見には個人差がありますが、男声合唱人の間では一致します)。「Ein Prosit」の合唱で始まり、伊丹市の条例に基づき「日本酒で」乾杯、伊丹市議会議員の方や今日の指揮者をはじめとする錚々たるメンバーの挨拶、果ては団員の会社の方も含め(!?)挨拶あり、談笑あり、そしてもちろん愛唱曲の合唱もあり、あっという間の2時間でした(歯の裏にへばりついたタルタルソースは歯を磨くまで香り続けていましたが……)。2次会を挟み、用事を済まそうと徹夜していたら、まぁ、そんなものが出来るはずもなく……用事はなんとかなったものの、古参の男声合唱人によるイベント、最後まで気が抜けたものじゃありません笑
ちなみに、もう2,3個やることがあるのですが、時間が時間だけに、ひとまずこの原稿を上げて今回は……短くしようと思ったものが長くなっているのは、そのやることのうちのひとつのためでもあります。とはいえ、Top Gearみながらダラダラ書いていたのは、さすがに時間かかりすぎの最大の要因だったか……笑

2 件のコメント:

  1. 「各種の情報」筆者です。このたびは拙ブログにリンクいただき、ありがとうございます。
    演奏会開催からリポート記事公開までのタイムラグが短いうえ感想など詳細なことに感服しながら、いつも楽しく拝読しております。

    くだんの演奏会へ私は伺っていないのですが、JAMCAの会報によると、第3ステージのアンコールで演奏された「故郷」は中村茂隆氏による編曲(マザーアース刊『尋常小学唱歌による男声合唱のためのエチュード』第8曲)とのことです。

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  2. せき様>>こちらこそ、毎度ご覧いただきありがとうございます。早さだけを売りにしている割には今回あまり早くないことに恐縮しきりです……

    また、編曲情報ありがとうございました。ここらへん、あまりライブラリに明るくないところが露呈して良くないですね……勉強させていただきます。

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