おおよそだいたい、合唱のこと。

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ゆっくりしていってね!!!

2014年7月27日日曜日

【千里エコー第10回記念定期演奏会】

2014年7月27日(日) 於 いずみホール

今週末は、ハルモニア・アンサンブル(東京)宝塚国際室内合唱コンクール(兵庫)など、合唱人注目のイベントが目白押しでした(すっごい主題から外れるんですけど、ハルモニア・アンサンブルっていう合唱団、イタリアにもあるんですね……笑)。特に宝塚なんて近所なのに、そんな中わたべは、頑張って研究室に篭もり(捗ったとは言っていない)、色んなイベントに今回はいくまい、と思っておりました。
そんな中、唯一馳せ参じた当演奏会。なんと、男声合唱界の巨匠・多田武彦先生の新曲初演という大イベントがラインナップされておりました。それだけで入場料 1,500円払ってもええくらいや。そんな中、個人的に思い入れのある『夢の意味』をやられるということで、これはもう、行くしかないだろう、ということで行ってまいりました。
またしても、北摂の地名を冠していながら北摂で演奏会をやらないタイプの合唱団です笑 とはいえ、この団、一般団とはいえ、関西大学グリークラブのOB合唱団であるため、その点、実情が異なるといえばそうなのですが。豊中に建設中の新ホールg(ry

・予習:多田武彦について
まぁ、タダタケデータベース見てくれたらそれが一番早いんですが←
清水脩に師事、『柳河風俗詩』(北原白秋)で合唱曲を書き始め、爾来、銀行員としての本業をこなしつつ(現在は定年退職)日曜作曲家として、多く合唱曲を残し続けている巨匠中の巨匠。特に男声合唱のレパートリーが豊富で、男声をやる上で多田武彦の名前を知らない人はいないほどです。今回の北原白秋はじめ、伊藤整や草野心平、三好達治、八木重吉など、近代詩に多く付曲しており、その曲のあまりの美しさと人気から、80年代から90年代初頭というバブリーな時代に、多くのグリーメンを柳河や三崎、北陸地方などといった何ともシブい観光地へ誘った、実に罪作りな作曲家です←(半分くらいは妄想)
ちなみに、何者かによって(←)ニコニコ大百科の記事が執筆された、数少ない日本の近代作曲家の一人でもあります。
嘗て関西大学グリークラブは『水墨集』(北原白秋)を委嘱し、それが北村協一先生の指揮で音源化されたこともあるそうで、そのことを記念してか、今回の『第二』の委嘱は千里エコー側からのリクエストだったとのことです。

・ホールについて
まぁ、前の記事見るまでもなく、有名なホールですね←
今回気付いたこととしては、これまであったっけ?という、いずみホール専用の録音アナウンスの存在ですね。今回はアナウンスはそれのみでした。内容は、
i. 録音・録画・飲食・喫煙禁止
ii. 電波遮断装置の案内
iii. 補聴器の装着確認(ノイズが出ることがあり、ちょうど前日の名フィルで騒音騒動があり、こちらも問題視されました)
の3つ(たぶん)。3番目を音で案内しても……とちょっと思いつつ。もともとここは電波遮断装置なかったはずなので、おそらく最近の録音でしょう。思うことはいろいろありますが、要は、個々人の心がけの問題。ちゃんと普段から注意しておきましょうって、そういうことですね。しっかり演奏聴く人間からしたら、自分から音出すなんてのは考えられないはずですから。社交でしか演奏会行かないよって人も、せっかくの会場ですから、音楽をいつもよりしっかり聞いてみると、思った以上に美しい世界が広がっていることに気づけるかもしれませんよ!というお節介でした(ホールの案内どこ行った……w)

何やら、第1ステージは特に、入場がもっさりしていたような気がします。スカート履いてるわけでもないですし、ちゃっちゃか出てきてくださったほうが印象いいですね……笑

第1ステージ
スペインの宗教曲集
Victoria, T.L.“Tenebrae factae sunt”, “Domine, non sum dignus”
Morales, C.”O magnum mysterium”
指揮:下井田秀明

スペインといったらビクトリア。さらにモラレスの作品を合わせて1ステージ。曲間が非常に長く、入場と含めて、演奏会のテンポに緩みを与えてしまったように思います。
内声の弱さが目立ってしまい、曲全体の輪郭がぼやけてしまっていたように思いました。3曲とも、ポリフォニックに展開していく曲なので、その点、各パートが自身の旋律をしっかり歌えていないと、音楽全体がすごく不安定に聞こえてしまいますが、ともすると外声ばかりに比重が行き過ぎて、内声が聞こえづらかったような気がします。セカンドが高音で張れない、あるいはバリトンが単純に音圧が低い、など、もう少し気にすることが出来たような気がします。トップの出し方でセカンドが出せると、よくハモって音圧も出てよかったのでは。和声は全般的に素晴らしく、いずみホールの音響も借りてとても気持ちよく聞こえましたが、逆に、上のような要因からか、3曲目は最初よかったもののだんだん推進力を失い、最後のトニックが短調に突っ込みかけてしまいました。こなれた感じで聴かせるのも効果的ですが、単純に、もう少ししっかりとした声を聞きたかった。

千里エコーの「委員長」のご挨拶。楽譜販売すること(3冊買って1冊自分持ちなうです)、アンケートのお願いなど。アンケート1枚50円と楽譜収益を寄付するとのこと。多額の寄付金が誕生です。特に、アンケート課金(←)は良い試みかと思います。

第2ステージ
多田武彦『水墨集・第二』(北原白秋)〈初演〉(2013年委嘱)
指揮:下井田秀明
I. 雨上り
II. 潮鳴の夜
III. 島の日永が
IV. 初秋の庭
V. 祭のまへ
VI. 時雨日和
VII. 風

あれ、これって初演なんですか?という、非常にタダタケらしさ全開のオーソドックスな楽曲です。もちろん、多田武彦先生の書法も少しずつ変化しているようで、特に今回は、擬態語のリズムの打ち方、3拍子と2拍子の組み合わせ、7曲中3曲にソロが付くなど、非常に技巧的な面をはらみつつ、特に後半3曲が壮大な主題を持っていて、タダタケ総合力を求めてくる曲となっていたように思います。白眉は6曲目。広く愛唱されたい曲です。演奏は、さすがにタダタケの新曲というだけあって、楽曲到着から1年かけたというのを割り引いても、基本的にとても完成度の高い演奏でした。一部、2曲目や3曲目で縦のリズムが揃わないことがちらほらあったように思いますが、後半3曲、特に主題がしっかりしてくる曲の完成度はとても高かったように思います。タダタケ音楽は、初演以上に、数多くの再演によって磨かれていくものです。今後の再演にも目が離せません。それを予期させるに十分な完成度を持つ良初演でした。
ちなみに、調べたところによると、今後も2作品、タダタケ作品初演が予定されてるんですって。御年84歳にしてなお初演。わーお。

インタミ15分。ここから、タダタケ楽譜販売。限定100部のうち3部抑えてしまいました、スミマセン。1冊は公共財として供出予定です、お問い合わせはそちらまで←
隣の方のお話に聞き耳立ててたら、プロムジカ聞きに行ったそう。いいなー。気付いた時にはチケット売り切れてたんだよなぁ……(遠い目)

第3ステージ
アラカルトステージ
“When The Saints Go Marchin’In”
「夜空ノムコウ」
指揮:天野雄介
「ロマンチストの豚」
“Sometimes I Feel Like a Motherless Child”
指揮:辻本太朗
“Sound Celebration”
指揮:松原幹治

お楽しみ系ステージ。指揮者のアルファベットの頭文字とって、「ATMステージ」と団内では呼ばれていたそう。なんつー扱いだ!w
団員の司会により「千里エコー1のプリティーボーイ」と紹介された1人目の指揮者笑 1曲目、出だしコケましたねwそれ以外は、強弱の使い分け、フレージングとも、非常に好感の持てる演奏でした。曲名ではわかりづらいですが、所謂「聖者の行進」。ニューオーリンズではこれを葬儀で歌うらしく、別名「ジャズ葬儀」というとか。へぇ〜。……「へぇ〜」って古いのかそういえば← 2曲目、実は指揮がずれていたとの説が濃厚、2番の頭で音にも出てしまいました。残念。
2人目は「千里エコー1のジェントルマン」。だんだん無理くり感出てきました← 3曲目、第1ステージでの内声の弱さが露骨に出てしまう曲でした。有名な曲ですから目が厳しくなるというのもありますが、全体的にぼやけがちなアンサンブル。4曲目、頭の低声がいまいち揃いきらないまま始まりましたが、中間部のtutti、そして絶品のバリトンソロが聞かせてくれました。
3人目は「千里エコー1のオチャメなハンサムボーイ」。もはや何でもありであるw中間部の子音のタイミングがバラバラになってしまいましたが、特に最後の和声は十分!和声を聞く曲でもありますし、その点、倍音豊かな満足な音が鳴っていました。いずみで聴くこの音は、本当に幸せ。

第4ステージ
上田真樹『夢の意味』(林望)
指揮:下井田秀明

個人的なもう一つの注目。私事ながら、1年間だけ学生団で指揮してた時に演奏会曲として指揮した曲でもあります……なんと1ステに。今となったら、とんでもないことしてましたね……まぁ、うぃろうで慣れましたが←
結論としては、超辛口なことを申し上げると(本当に超辛口でスミマセン)、この曲のことを理解していないのでは?と思わされる演奏でした。技術はよかったんです。和音はきっちりハメられる団なので、実際、この曲とも本来とても相性がいいはずでした。何が問題だったか。主に、テンポ設定に難ありです。特に旧くから合唱をやられている方だと、高田三郎『水のいのち』から「雨」をすさまじい早さで演られて怒る、という方が少なからずいらっしゃるかと思いますが(何を隠そう、高田先生自身が非常にゆっくり振られていた)、ちょうど、それに近い印象を持ってしまいました。混声と含めると、この曲を聞いたことがあるのは主に3種類、ヤマカズ東混のCD、いずみ定期での大谷東混、あとCDで、清水甍会の3種類。この中だと、大谷先生が若干速めかな?という印象がありましたが、それにしても、その1.5倍近いテンポで駆け抜けていった今回の演奏のテンポは、正直、口語詩としての完成度と叙情性の高い歌詩を全く堪能出来ない出来だったように思います。また、あまりのテンポの早さから、楽譜にとても細かく設定されている数多くのテヌートやアクセント、その他標示を尽く再現しきれない要因ともなってしまいました。ディナーミク、あるいは詩への配慮、この曲は、それさえ出来れば半分は完成するはずなのです。かくも拙速に演奏する必要は、正直必要なかったように思います。若さを出すにしても、幼すぎる。ピアノも、最初から最後まで、ボリューム2段階落として十分だと思います。やや平板だったように思います。
……思い入れが強すぎるんですかね?僕自身、この曲に。

・アンコール
松原指揮・多田武彦「雨後」(『追憶の窓』から・三好達治)
下井田指揮・信長貴富「鎮魂歌へのリクエスト」(『新しい歌』から・L. ヒューズ/木島始・訳)

そう、『夢の意味』はもっと表現できたはずなんです……この2曲をここまで叙情的に表現できるんだもの!タダタケの、あまりに有名なこの旋律、そして重厚な和声、かわって、ジャジーに、しかし協和音でバッチリとハモるかっこよさをもった信長、いずれも、『夢の意味』を凌駕する十二分の出来でした。だからこそ、『夢の意味』の完成度が悔やまれる、そんな出来でした。逆に、演奏会の終わりとしては、納得して帰れる演奏。あと、口笛ウマ過ぎですwwwwwww

その他、身バレご挨拶などして、大阪城公園駅を後に。大阪城ホールでもライブやってました。

・まとめ
有意義な活動をしているOB合唱団として、その可能性について両極端な結果が出たところだと思います。とはいえ、ポテンシャルは非常に高い団だと思います、その点、しっかりとした演奏を今後とも残していって、それが関大グリーに対してもいい影響を残す演奏になると、より良いのだと思います。何より、この時代にタダタケ作品を世に問うことが出来たというのは、近代合唱史においても重要な功績です。十分に、聴き応えのある演奏会でした。まぁ、『夢の意味』は……単に僕の思い入れの問題です苦笑 失礼いたしました。

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