おおよそだいたい、合唱のこと。

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主に、管理人が参りました、合唱団の演奏会のロングレビューを掲載しております。
また、時折、気分に応じて、合唱如何関係なく、トピックスを記事にしています。
合唱ブログのつもりではないのに、気付いたら合唱ブログみたいなことになってきました。
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ゆっくりしていってね!!!

2014年3月27日木曜日

【金城学院グリークラブ第35回定期演奏会】

2014年3月26日(水) 於 愛知県芸術劇場コンサートホール

 春は別れの季節です。なんていうとしんみりしちゃいますが、愛知県の中高学生合唱団の定期演奏会は、そんなシーズンに行われます。学校を卒業して、最後に卒業するのが、古巣の合唱団。もしかしたら、学校以上に、思い入れの深いものと、最後にお別れするのかもしれません。3年生たちが金城の制服を着るのは、今日が最後だったのでしょうか。
 そんなわけで、しばし愛知県へ引き篭もっているわたべは、金城学院グリーの演奏会を思いつきで聞いてきたのでした。三河の女声合唱団といったら光ヶ丘女子高等学校系列なら、尾張は金城学院、というイメージが強いです。特に中学グリー、および大学は、たびたび全日本合唱コンクール全国大会へ出場する、強豪の一角です。
 なお、出演団体は、中学グリー、高校グリー、大学グリー、そして、OGグリー(!?)のエシュコルでした。エシュコルと大学グリーは兼団している方も多かったようです。

・ホールについて

 大阪での演奏会のレビューが多かったため、このホールは初めてですね。そういえばしらかわホールも出ていない。
 名古屋フィルハーモニー交響楽団の主戦場でもある、名古屋でもっとも大きい、シューボックス型コンサートホールです。大きいホールというと、他に、グランドオペラ対応の、愛知県芸術劇場大ホールや、最近普門館に取って代わって吹奏楽の朝日コンクールが開かれている、名古屋国際会議場センチュリーホールなどがありますが、クラシックの演奏会用のホールとしては、このホールが音響良好なホールです。愛知県芸術劇場は、バブル期に建てられたため(!?)豊かな内装と大胆な吹き抜けの意匠に、大ホール、コンサートホール、県立美術館(付ギャラリー)に資料室などが入っています。
 コンサートホールは、響きが不十分だと言われることがありますが、響きの広がりがとても優秀なホールです。スウェーデン放送合唱団が来日した時は、3階で聞きましたが、それでも十分な声が飛んできました。名フィルの主催公演では、3階席の最後列正面がY席として販売されますが、そこでも十分劣化していない音響で音楽を楽しむことが出来ます。日本で二番目に贅沢なユース券だと思ってる(一番はシュッツ←)。合唱が鳴らすのは少しむずかしいイメージが、過去の演奏経験からもありますが、名演をちゃんと育ててくれる、ある意味、試されるホールです。残念な点があるとすれば、響き的にはいいのですが、天井のシルクカーテンのような意匠がコンクリな点でしょうか笑
 ちなみに今日のピアノはヤマハCFシリーズでした。

・校歌(中学・高校ジョイント)

 なにより、頭のユニゾンで、もう満足! 最初の音を聞いた瞬間に、演奏会の成功を確信しました。それくらい、素晴らしい音を一瞬で聴くことが出来ました。上手い合唱団は、内声もさながら、ユニゾンは抜群に上手いんですね。逆に、ユニゾンが上手いと思わせるような演奏をする団は、もう、コンクール上位クラスですね。もっとも、後付感は否めませんが笑
 慣れもあり、心地よい演奏でした。大学グリーもそうですが、若干アルトが押す感じもありましたが、ケースバイケースです(後述)。澄んだハーモニーはさすがの一言。ユニゾンだけでなく、ハーモニーも上手い。大学グリーのジョイントでも聴きましたが、人数多いと、より映える曲ですね。

司会は、金城学院高校放送部の子。放送部アナウンス出身者としては色々言いたいこともあるにはありますが、1000人以上の観客を前に、よく頑張りました。ただ、是非今度は、クリップボードでも用意して差し上げてください、喋りづらそうでした苦笑

指揮:小原恒久(1,3,5,6)、宮木令子(2)
ピアノ:森貴美子、柳河瀬貴子
編曲、ドラム:小林啓一(4)
ベース:高島基明(4)
キーボード:吉川純子(4)

ピアノのステージ配分については、正確な情報を失念しております。情報ください!

・第1ステージ(中学・高校ジョイント)
鈴木憲夫『マザー・テレサ 愛のことば』(マザー・テレサの言葉による・詩)

 素晴らしい!祈りの思いとハーモニーが身につまされる、名演。先述の、このホールの残響を余すことなく活かしきる音作りの素晴らしさ。なにか、クリスチャンの信仰心の源泉すら理解出来てしまうような名演でした。ミッション系のグリーはこれだから、たまらない。
 曲としても、鈴木憲夫先生の作品の中では『祈祷天頌』(名大医混)の演奏が一番記憶に残っているというわたべの中で、イメージを塗り替えられる衝撃でした。それぞれの言葉の中に篭められたマザー・テレサの思いを音にするのは、シンプルな言葉だからこそ難しい作業であっただろうと思いますが、最低限の音のみを使い、シンプルに、透き通ったハーモニーで、的確に言葉を音にした名作だと思います。なかでも「主よ、今日一日」の絶唱は、本当に美しかった!普段の生活の中で、あるいは、ミサなど宗教活動としての演奏の中で、十分言葉の意味を吟味しているのでしょう。よどみなく、澄んだ声は、作品と呼ぶ以上のものだったように感じています。
 技術的な面でいうと、"Kyrie"の'y'や"Gloria"の'l'が、典型的なカタカナ発音だったように思います。難しいんですけれどもね、上に行くには、クリアしておくべき課題かと思います。……メモにも、それくらいしか書いてないんですけどね、この曲については。泣きそうになっちゃいました。

・第2ステージ(エシュコル
シューマン『6つのロマンス』第1集、第2集より
Op.91 Nr.3 "Der Wassermann"(Kerner)
Op.69 Nr.6 "Die Capelle"(Uhland)
Op.91 Nr.6 "In Meeres Mitten"(Rückert)

 OG合唱団、エシュコル。コンクールで普段、一般部門(旧B部門クラス)で歌っていると、常々部門が違うものの、妙な強さを持っている団というイメージが非常に強い団です笑 まともに演奏を聞かせていただくのは、はじめてです。
 嘗てのグリーでの鍛錬の成果をよく活かした快演でした。もちろん人数の面では中高グリーには劣る面がありますが、しっかりハーモニーを聞かせてくれたように感じます。ただ、最後の曲の三和音が外れてしまったのが本当に惜しい。加えて、高音から入る時にソプラノが若干ずれるのがマイナスか。それにしても、ドイツ歌曲の魅力を十分堪能出来ました。この時代の曲、混声だと少ない気がするのですが、気のせいでしょうか。「流浪の民」はともかく。
 ところで、一曲目(「水の精」)、どこかで聞いた気がしてならないんですよねぇ。もちろん、どこでも聞けるような名作ではあるのですが。身の回りの資料を色々あたりつけても見つからない。唯一のヒントは、2008年の全日本課題曲であるということ。でも、その時期わたべは合唱をやっていない。うーん?

・第3ステージ
木下牧子合唱曲集
中学・高校合同「44わのべにすずめ」(ダニエル・ハムルス・詩、羽仁協子・訳)
高校「棗のうた」(『絵の中の季節』より、岸田矜子・詩)
高校「あけぼの」(無伴奏混声合唱のための『春二題』より、島崎藤村・詩)
中学「春は来ぬ」(同上)
中学「草に寝て…」(女声合唱組曲『暁と夕の詩』より、立原道造・詩)
中学・高校合同「鴎」(三好達治・詩)

 今年のコンクール自由曲は、木下牧子先生の曲で揃えたとのこと。夏には先生を招いてのレッスンもあったそうです。いってみれば、コンクール報告演奏ステージですね。「べにすずめ」小原先生曰く、普段の教室の様子を思い出す曲とのこと。縦のハーモニーに良い演奏だったからこそ、一瞬のリズムのズレが気になってしまいます。特に、テンション上がるにつれて、ズレが目立ってしまいました。「棗のうた」要所を抑えた快演。「あけぼの」クラスターの、少し外声が浮いたように聞こえました。とはいえ、基本的な事柄は十分。曲想は十分出ていたように思います。「春は来ぬ」ソプラノのオブリガードが絶品でした。最後の低声部が惜しいと、現場でのメモには辛口コメント。「草に寝て…」'n'の詰まりの時間が少し短かったか。細かいことは楽譜見ないとなんとも言えませんが。また、'i'が'e'っぽいのが顕著に目立った演奏だったようです。下降して和声をつくる低声が若干淡白だったかもしれません。より質感を持った音作りをしたいところです。メロディは見事。「鴎」混声が羨ましかった、と小原先生。楽譜が出て、ようやく演奏がかないました。2番のメゾが少し弱かったかもしれません。しかし、女声版、よい!いい演奏でした。混声版もそうですが、3番の入りの和声は、芸術ですね。

インタミ15分。適切です。特に、幕間の転換が早かったので、その意味でも、さくさく進んだので、休憩少なめも納得です。

・第4ステージ(中学3年・高校ジョイント)
「ジブリの世界〜いのち〜」(arr. 小林啓一)
久石譲「風のとおり道」(宮﨑駿・詩)
久石譲「いのちの名前」(覚和歌子・詩)
紅龍「いつでも誰かが」
Amanda McBroom「愛は花、君はその種子」(McBroom・詩、高畑勲・日本語詩)
二階堂和美「いのちの記憶」

 お楽しみ、ジブリステージ。小林啓一先生の、各曲を再解釈した独創的なアレンジが光りました。生音とシンセの合流の仕方にあざとさがなく、少しジャジーに自然に編成としてまとまっていたように思います。特に、「いつでも誰かが」のアレンジは絶品。編成との相性もよかった。中高生らしい、可愛らしい振りもついていて、楽しい演奏でした。言葉の滑りなどが気になるところはありましたが、まぁ、お楽しみですので笑 何より、ドラムにアンプからベースとシンセの音が結構なボリュームで流れてくる中、パーカッションまで加わったり、その中でよくぞ気丈に声を張り続けてくださいました!笑

・第5ステージ(大学グリー
松下耕『うたおり』(みなづきみのり・詩)より
「薔薇」
「崖」
「戦場」
「夕餉」

 と同じプログラムです。その後、コンクール全国大会進出がありましたので、いわば報告演奏、凱旋公演と相成りました。
 さすが、全国大会を踏むと、一気に成長しますね!嘗て物足りなさもあった、2曲目、3曲目の刺さるような音が特に、夏より洗練されていたように感じます。夏の演奏の際には、ところどころ声の出だしにズレが出ている、と書いてありましたが、今般の演奏は、決してそんなことがありませんでした。首尾一貫と、しっかりと糸の通った演奏。何より、この演奏会の中で、もっとも、「聴かせる」演奏として仕上がっていたように思います。ステージマナーを含め、よい意味で慣れを感じさせる、堂々とした演奏!
 しかし、「夕餉」、いい曲だなぁ……笑 欲を言えば、全曲聞きたかったです笑

・第6ステージ(合同ステージ)
新実徳英『つぶてソング』第1集(和合亮一・詩)

 ステージいっぱいに広がって、本日出演の全メンバーによる演奏。同じ出自、同じ小原先生の指導を受けた人たちとはいえ、それぞれの世代によってすこしずつ得手不得手があるところ、それを上手く補い合う格好になりました。文句の付けようのない名演。あくまで技術的な面では役不足感すらある、堂々たる演奏でした。
 技術的なこと以外で言うと、主に中高生を中心とする世代の子達がこの曲を歌うことについての意味に考えを巡らせていました。合唱を普段からやっていらっしゃる方だと、このへんの事情は詳しいかと思いますが、この曲は、和合亮一先生が震災直後に故郷・福島を思ってTwitterに書き連ねていたものに新実先生がはじめ歌曲として作曲したものです。2011年東混いずみ定演を皮切りに、合唱での演奏も実現されるようになりました。彼女たちは、まさに、震災を青春時代に目の当たりにした世代。その世代が、震災と同じ時代に、この曲に出会って成長することに、幾許か、意味があるような気がしてなりません。

・アンコール
youth case「ふるさと」(小山薫堂・詩、arr. 小林啓一)with Pf., Drums, Bass

 昨年の小学校課題曲を、小林啓一先生によるアレンジで。伸びやかな声によって演奏される主旋律と、邪魔をしない程度の推進力のあるドラムが、本当によく合っていた!いわば、「つぶてソング」の一つの答えのようにして演奏された曲としても、とても感動できる歌声でした。

 最後は、小原先生が、一学年ずつ紹介して終わり。各学年に対する視線が、まさに、先生、といった感じでした。いい先生だなぁ。

・ロビーコール
Kiroro「未来」a capella

編曲者が誰のものだろうか。募金活動の人の波と相まってごっちゃになっていましたので、演奏の感想としては省略。最後の演奏、よく歌い上げました!

・総評

 これが、名古屋随一の女声合唱!比較的若年層の女声合唱が下火にある(どの地方もか?)名古屋地域において、中々聴くことのない、貴重な演奏でした。何より、演奏が本当に素晴らしい!これでも、全国上位に上り詰めることが未だできていない点、中学や高校のコンクールというのは、本当に勝ち抜くのが難しいのだろうなぁと感じています。女声合唱に対して、よりよいイメージを抱くことが出来ました。本当に素晴らしい演奏を、ありがとう!

・おまけ

 一般ブロックへ照準をあわせ、この場を借りるようになって恐縮ですが、少し、一般的な話を。たびたび、宗教以外にも政治思想的な主題で作曲されることもあるのが、この合唱ジャンルの特色のひとつでもあります。アマチュア合唱団としては、全日本合唱連盟の流れを汲む派閥以外にも、池辺晋一郎『悪魔の飽食』の演奏などで著名である、うたごえ運動の系列が存在します。しばしば、特定秘密保護法などの政治思想を主題に演奏活動を行ってニュースになるのは、この系列の団体です。発祥を異にし、その活動スタイルも、基本的に交流することの少ないのが現状ですが、レパートリーについては、ときに交流を見せることもあります。実際、連盟系の合唱団が好んで演奏するレパートリーでは、荻久保和明『In Terra Pax 地に平和を』『しゅうりりえんえん』などをはじめとする反戦歌を中心に、そういったプログラムは多く存在します。
『つぶてソング』は、思えば、連盟系の団にとっては、久々の、いわば「うたごえ系」レパートリーとも言えます。初演としても、決して合唱がメインではありませんし、まして、新実先生自身には、そういった意思もなかろうと推察します。だからこそ、逆に、こういった機会をきっかけに、広くジャンルを問わず、合唱活動の交流が図られるきっかけになるのは、決して悪いことではないと思います。活動も違えば、アプローチの仕方も違います。もちろん、お互いの政治的主張には賛否それぞれあることでしょう。しかし、その意味でも、交流の試みは、お互いにとって、きっと勉強になるような気がしています。
 以上、あくまで提言として。

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